アップルが高い利益率を残す三つの理由

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1. 本記事の目的

本記事では、考えられないような利益を叩き出す米国のメーカー「Apple」を取り上げ、経営学の観点から戦略を分析し、利益率が高い理由に迫ります。

アップルが、高い利益率を実現している理由は三つあります。一つ目がiPhoneの魅力向上により、販売量と販売価格を維持していること、二つ目が比較的お金を持つ中間層から上位層の顧客を有していること、三つ目が各ステークホルダーに対し、高いパワーを有していることです。アップルの高い利益率は、多様な収益源を有し、それらが互いに影響し合う独自のエコシステムを形成することで実現しているのです。

2. アップルの利益率

アップルは、本年一月に2020年度第1四半期(2019年10~12月)の業績を発表しました。売上高は前年同期の843億1,000万ドルから9%増え、918億1,900万ドルとなりました。日本円に換算すると、約10兆円もの数字となります。

売上高はさることながら、純利益も2019年度第1四半期の199億6,500万ドルから11%増えて222億3,600万ドルとなりました。売上高純利益率は、約24%ととんでもなく高い数値となります。

なぜアップルは、ここまで高い利益率をたたき出せるのでしょうか。

3. 販売量と販売価格を維持している

一つ目の理由は、iPhoneの魅力向上により、販売量と販売価格を維持していることです。アップルの主力製品であるiPhoneの魅力を向上させるには、まず、製品の機能性やデザイン性を追求する必要があります。アップルは、iPhoneの魅力向上のため、スマートフォンの核となるCPUの性能向上や認証機能等の付与、デザイン性を追求してきました。

加えて、アップルは補完財であるアプリを充実させるために、AppStoreというオンラインプラットフォームやSDKを開発しました。アップルが他社に先駆けオンラインプラットフォームをスムーズに構築できた理由は、iTunesでの経験が活きたと見られます。AppStoreやSDKの構築は、多数のアプリ開発業者の参入動機に繋がり、AppStoreで購入できるアプリの質と量の充実に寄与し、iPhoneの魅力を向上させました。

また、iPhoneの魅力向上により、世界のスマートフォン市場規模の拡大と相まって販売量が増え、アップルは家電量販店に頼らない直販体制を構築できました。自社の直販体制の構築は、販売価格の維持や家電量販店に支払うリベート減少に繋がります。最終的に、製品の販売量が増加すると顧客増加によるネットワーク効果が働き、AppStoreへのアプリ提供の魅力が増えることで開発業者の参入動機がさらに高まり、アプリの充実によりiPhoneの魅力が向上していくという好循環が生まれるのです。

以上の要因により販売量拡大と販売価格維持が達成され、アップルの高い利益率は実現している。

4. 中間層から上位層の顧客を有する

販売価格の維持は、その他部分にも良い影響を及ぼします。それは、二つ目の理由である比較的お金を持つ中間層から上位層の顧客を有することです。iPhoneは元々の価格が低くない上に販売価格が維持されているため、先進国の中間層から上位層の顧客しか基本的に購入することができません。そのため、iOSのシェアは先進国である日本やアメリカ等で高く、インドやエジプト等で低いと考えられます。

お金を持つ優良顧客が多いことは、有料アプリの利用金額でAppStoreがGooglePlayを大きく上回って推移している点に表れ、30%にも上るアプリの売価の取引手数料により、AppStoreを運営するアップルに多額の売上が入ることとなります。

加えて、優良顧客を有することは、safariの検索による情報価値を高めることに繋がります。グーグルがアップルに多額の手数料を支払っている理由は、優良顧客の通信情報を入手するためであると考えられる。提供コストがほぼかからない手数料の獲得はアップルの高い利益率に寄与しているのです。

5. 原価や費用の抑制

これまで売上の獲得という観点で見てきたため、原価や費用の抑制という観点で分析するのが三つ目の理由です。それは、アップルが各ステークホルダーに対し、高いパワーを有していることです。

高いパワーを持つ理由は、一つ目の理由であるiPhoneに魅力があり多くの販売量を見込める点が影響しています。まず、携帯キャリアに対しては、販売管理費となる広告費用を負担させる等、アップルにとって有利な契約を結んだと考えられます。次に家電量販店に対しては、値引きをさせないようコントロールできる契約を結び、売上高原価率の上昇を抑制しました。電子部品メーカーに対しては、単一モデルの部品を多く発注することによりアップルへの売上高依存度を強めさせ、納入価格や納期を早めることで製品原価を抑制していると見られます。

以上三つの理由により、アップルは高い利益率を実現しています。アップルの戦略は強固であるため、今後もGAFAの一角として世界中で存在感を発揮しそうです。

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プロフィール

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このサイトを運営しているhk5です。
1991年生まれ、東京生まれ東京育ち。
都内の某私立大学を経て、某シンクタンクの支社決算業務の主担当として従事。 3年半勤務後、某コンサルテインングファームでAIプロジェクトの企画書作成、某金融機関のチャットシステム実装のPMO、某政府系組織のシステム企画の要件定義等を経験する。
現在、都内の某国立大学院で経営学を学習中。加えて、大学院と提携しているコンサルティングファームと協業し、将来の公立病院の経営戦略をテーマにレポートを執筆中。
また、中小企業診断士として、週1~4程度の頻度でベンチャー企業の業務を手伝い、新事業企画の立案や収支シュミレーションの作成等、パワーポイントを中心とした資料作成や市の融資相談員を行っている。
趣味は星野リゾートと離島巡り。日本中回りたいと思っている。
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