日本電産によるオムロンオートモーティブエレクトロニクスの買収に対する評価:オムロン編

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1. 本記事の目的

本記事では、日本電産(6594)によるオムロン(6645)子会社のオムロンオートモーティブエレクトロニクス(以下OAE)の買収について評価を行います。この買収(売却)は、オムロンの株主の立場としては、株主価値創造のための戦略的観点から二つの理由より高く評価できます。一つ目は、売却する車載事業がノンコア事業かつ他事業と比べ採算性が低く、資本コストに利益が届いていないからです。二つ目は、コア事業に資源を集中させるための資金獲得ができるからです。加えて、ベストオーナー基準からも、事業を売却することは是であると判断できます。なお本事業の売却は、発表後にオムロン株が急伸したことから、株式市場からも高く評価されました。

2. 株主価値が創造できる理由

今回の事業売却が株主価値創造を可能とする理由は二つあります。一つ目は、売却する車載事業がノンコア事業かつ他事業と比べ採算性が低く、資本コストに利益が届いていないからです。オムロンは、投下資本利益率を重要な経営指標に掲げ、事業ポートフォリオの最適化に向けて事業の選別を進めるという戦略を採用しています。加えて、参入障壁の低さや将来見込まれる市場成長の高さから、次世代車向け車載部品において競争がさらに激化し、大きな投資負担が必要となるとオムロンは見込んでいます。そのため、ノンコア事業かつ他事業と比べ採算性の低い車載事業を売却することは、外部環境の変化を含めた経営戦略の判断として合理的であり、将来の株主価値創造に寄与すると言えます。

二つ目は、コア事業に資源を集中させるための資金獲得ができるからです。車載事業の売却による資金の獲得は、経営計画である「Value Generation 2020(VG2020)」で定めた2020年度の数値目標を達成するために不可欠です。オムロンが経営計画で定めた数値目標が売上高1兆円、営業利益1,000億円である一方、2018年度の売上高が8,595億円、営業利益が766億円と、当時の数値の伸び率から考えても目標数値に届かない可能性は高かったのです。そのため、コア事業かつ収益性の高いFAとヘルスケア、ソーシャルソリューション部門への設備投資やM&Aを行うための資金を、ノンコア事業である車載事業の売却で得る必要がありました。

以上二つの理由により、本事業の売却は将来キャッシュフローの現在価値を増加すると予想されます。将来キャッシュフローの現在価値増加は、オムロンの株主価値創造のための戦略的観点から望ましいのです。

【参考】Value Generation 2020

3. ベストオーナー基準という考え方

戦略的観点から本売却は望ましいと言えども、オムロンの車載事業は、40年近い歴史や一定程度の事業規模があり、業界平均と比較して遜色ない収益力を上げていました。加えて、車載電装部品産業には市場拡大という大きな機会があります。

そのような中で事業を売却することの是非は、ベストオーナー基準によっても是と判断できます。その理由は、車載事業にとっての最適な成長戦略が、車載事業をコア事業とする日本電産というベストオーナーへの売却であると判断できるからです。ベストオーナーへの事業売却により、事業に十分なリソースが投入されることで、将来の事業撤退や従業員のリストラの可能性を減らすことが可能となります。

4. 本買収の評価

以上、株主価値創造を可能とする理由二つに加え、ベストオーナー基準の考え方から、オムロンの日本電産へのOAE売却は高く評価できます。本事業売却は、発表後にオムロン株が急伸したことから、株式市場からも高く評価されています。

日本電産によるオムロンオートモーティブエレクトロニクスの買収に対する評価:日本電産編

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このサイトを運営しているhk5です。
1991年生まれ、東京生まれ東京育ち。
都内の某私立大学を経て、某シンクタンクの支社決算業務の主担当として従事。 3年半勤務後、某コンサルテインングファームでAIプロジェクトの企画書作成、某金融機関のチャットシステム実装のPMO、某政府系組織のシステム企画の要件定義等を経験する。
現在、都内の某国立大学院で経営学を学習中。加えて、大学院と提携しているコンサルティングファームと協業し、将来の公立病院の経営戦略をテーマにレポートを執筆中。
また、中小企業診断士として、週1~4程度の頻度でベンチャー企業の業務を手伝い、新事業企画の立案や収支シュミレーションの作成等、パワーポイントを中心とした資料作成や市の融資相談員を行っている。
趣味は星野リゾートと離島巡り。日本中回りたいと思っている。

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