ドイツのシュタットベルケに学ぶ地域循環型介護・医療構想 後編

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1. 従来の地域経済メカニズム

地域循環型介護・医療構想 前編

地域循環型介護・医療構想 中編

前編および後編より、新時代の介護の在り方として、「地域循環型介護・医療構想」を私は提唱します。まず、従来の市区町村単位の地域経済メカニズムは、以下図の通りとなります。

従来の地域経済メカニズムには、大きな欠陥が二つあります。一つ目は、介護・医療事業者のビジネスモデルが、図の③の介護報酬や診療報酬、図の④の交付金等、国や自治体の報酬や補助金に頼り切っているということです。国や自治体に頼り切っていると、法改正による介護報酬や診療報酬の減額、廃止、補助金の打ち切り等の環境変化に付いていけないという問題が起きます。

実際の例として、訪問介護事業者は、度々の法改正で事業の風当たりが強まっています。東京商工リサーチの調査 によると、2019年上半期の訪問介護事業の倒産は、前年の18件から32件(前年同期比77.7%増)に急増しています。主な倒産の理由はヘルパー不足との一方で、介護保険制度の改定の影響も少なくないと考えられます。介護や医療事業者の急な倒産は、地域住民にとって便利な生活を阻害する要因となり得ます。

二つ目は、地域の民間世帯が使うサービスのほとんどが、図の⑥や⑦のように地域外に資産が流出する構造であるということです。例えば、移動手段を得るために車を購入すると自動車メーカーに、電車を利用すると鉄道会社に利用者は料金を払わなければなりません。これでは、自動車メーカーや鉄道会社の本社が位置する都市部にお金が流出してしまい、地域経済の発展を妨げることとなります。

また、電力会社から電気を買う場合も、電力会社の本社が位置する都市部にお金は流出します。年金や観光事業等で稼いだお金が都市部に還流してしまうことは、地域内での経済循環を妨げ、地域住民の生活を向上させることができません。

2. 地域循環型介護・医療構想

それら従来の地域経済メカニズムの問題点を踏まえ著者の提唱したい構想が、「地域循環型介護・医療構想」です。

本構想は、ドイツのシュタットベルケ や欧州のMaasの事例 より著者が考えたものです。シュタットベルケとは、ドイツ語で直訳すると「町の事業」を意味する言葉であり、電気、ガス、水道、交通などの公共インフラを整備・運営する自治体所有の公益企業のことを指します。実際にドイツでは、公益事業による電力小売りで黒字を維持し、その収益で他の公共サービスの赤字を補填しているケースがみられます。また、Maasとは、いろいろな種類の交通サービスを、需要に応じて利用できる一つの移動サービスに統合することです。

図の「地域循環型介護・医療構想」の詳細については順を追って説明します。まず、図の①の自治体による事業体への出資は、自治体が100%行います。理由としては、運営事業の公共性が非常に高いため、株式の100%を自治体が握ることで、公共事業体が暴走しないようチェック機能を働かせるためです。

図の②の運営する事業の内容としては、Maas事業と介護・医療事業、売電事業を想定しています。Maas事業の内容としては、公共事業体がスマホアプリやWebページを運営し、移動サービスを提供することで、手数料等を得る事業です。本事業は、公共事業体が収入を得ることに加え、車の運転が出来ない要介護者等の高齢者に対し、移動の手段を与えることが可能となります。

売電事業は、空いている敷地にソーラーパネルや風力発電、水力発電所を設置し、発電した電気を地域外の民間世帯や工場、地域外の電力会社や企業に売却し収益を得る事業です。天候や地理的に発電が安定しないこともありますが、この事業は比較的安定的な収益を得られることが見込まれ、、運営事業の核となることが可能となります。こうしてMaas事業や売電事業により得た収益は、収益性が高くないと見込まれる介護・医療事業に補填します。

図の③の民間による各事業の利用では、現在運営されているサービスより便利なものを、手ごろな料金で提供するということが重要です。料金が高いと住民が利用しないという点に加え、公共事業体であることを意識し、利益第一主義にならないよう経営者および社員の高い倫理観は必要です。

④の介護・医療事業への損失補填は、介護・医療事業が福祉サービスとしての側面が強いため、多少の赤字を許容するため必要なことです。ただし、赤字幅の拡大することがないよう、後述で述べる新しい介護補助システムは必要です。

⑤の事業全体として利益を出すということは、それぞれの事業の連携を重視し、全体として採算がとれるよう調整することが必要です。

⑥の売電と⑦の電力会社等による電気の購入は、太陽光発電等で発電した再生可能エネルギーの需要が多いと考えられるため、地域内にお金が入ってくる仕組みを作るために重要な核となる部分です。特に昨今RE100 という、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブが浸透しており、こうした動きはさらに活発化すると予想されます。

⑧の移動手段および⑨の仲介手数料は、公共事業体によるMaas事業により、観光客に移動の便を与える代わりに、仲介手数料を取るというものです。特に、十分な観光資源を有している一方で、交通の便が悪い地域のポテンシャルは大きいと考えられます。

3. 新しい介護補助システム

以上、私の提唱する「地域循環型介護・医療構想」により、経済の地域循環が発生し、主に介護・医療事業等で国の方針に頼らないサービスを地域住民に提供することは可能す。しかし、前編および後編で述べた通り、介護業界は人手不足が深刻であり、そのことでサービスが提供されないことは予想されます。そのため、課題の解決性で示した、人材の専門分化や機能分化を進める施策を一つ提唱する。それが、新しい介護補助システムです。

公共事業体が介護事業を行うにせよ、処遇や体力面の影響により介護職員の人手不足が顕著であることに変わりはありません。そのため、人材の専門分化や機能分化を進め、介護資格を保有していない人が補助業務に従事できるような制度を作り、介護市場に参加しやすい環境を作ることが必要です。

図の介護補助システムは、高齢者等の利用者の介護補助を地域住民が行い、その対価が支払われることで、介護補助業務の担い手を作るというものです。ここでいう介護補助という言葉の定義は、買い物や掃除、車を含めた移動の補助等、主な介護業務以外のこと全般を指します。

まず、地域住民および利用客はスマートフォンや電話で介護補助システムに登録を行います。高齢者にスマートフォンが使用できるかという課題がある一方で、スマートフォンの個人保有率は60代で44.6%、70代で18.8%と、近年徐々に普及しています。そのため、スマートフォンが利用できない高齢者の登録や利用の対応を当初電話で想定し、徐々にスマートフォンに移行していくことが望ましいです。ただし、スマートフォンでサービスの提供を行う場合、文字を大きくすることや画面の構成をシンプルにすること等により、高齢者でも使いやすいUIを考える必要があります。

次に利用時の手続きは、利用客はサービスごとに決められた利用料を介護補助システムに支払います。その情報はシステム上で地域住民に公開され、サービス提供を行いたい住民と利用客をマッチングさせます。

最後に、地域住民によるサービスの提供後、仲介料を除いた利用料が支払われ、サービス提供者の評価を利用客は行います。この評価を必ず行うことが本システムの重要な点であり、質の悪いサービス提供者を市場から排除することで、サービスの質を担保することは可能となります。

本システムで予想される効果は二つあります。一つ目は、補助業務を含めた介護事業の人手不足を緩和すると共に、間接的に高齢者の介護予防となる点です。高齢者は、年金だけでなく、利用者自身がサービス提供し貢献し対価を得ることで、社会とのつながりや役割を感じることができます。このような高齢者の社会関係性の維持は、身体や心の健康維持の重要な要素になると考えられます。

二つ目は、高齢者の子が遠くに住んでいるケースが多いという課題に対し、地域一体で高齢者を見守る仕組みを整えることが可能である点です。システムで高齢者ごとの利用頻度等のデータを蓄積することにより、利用状況に変化があった際地域住民や警察等にシグナルを発することが可能です。

補足として、利用料を含めた対価を地域通貨によって支払うことが好ましいです。理由は、地域通貨に様々な利用者間で譲渡し流通する性質を持つという転々流通性を有しているからです。地域通貨の利用は、地域内の人から人、企業へ、あるいは地域内の企業から人、企業へと何度も繰り返し使用し、地域内で経済を強く循環させることが可能です。

4. 結論

今まで述べてきた「地域循環型介護・医療構想」は、私の一つの案であり、この構想により課題が必ず解決できるとは限りません。しかし、現在の介護・医療制度は国に依存し、自立していないという点で、持続的運営に不安があります。利用者および地域住民、納税者のためにも、本構想のような自立した制度の確立が必要であると私は考えます。

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ドイツのシュタットベルケに学ぶ地域循環型介護・医療構想 中編

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このサイトを運営しているhk5です。
1991年生まれ、東京生まれ東京育ち。
都内の某私立大学を経て、某シンクタンクの支社決算業務の主担当として従事。 3年半勤務後、某コンサルテインングファームでAIプロジェクトの企画書作成、某金融機関のチャットシステム実装のPMO、某政府系組織のシステム企画の要件定義等を経験する。
現在、都内の某国立大学院で経営学を学習中。加えて、大学院と提携しているコンサルティングファームと協業し、将来の公立病院の経営戦略をテーマにレポートを執筆中。
また、中小企業診断士として、週1~4程度の頻度でベンチャー企業の業務を手伝い、新事業企画の立案や収支シュミレーションの作成等、パワーポイントを中心とした資料作成や市の融資相談員を行っている。
趣味は星野リゾートと離島巡り。日本中回りたいと思っている。
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