ドイツのシュタットベルケに学ぶ地域循環型介護・医療構想 中編

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1. 介護業界の課題と解決の方向性

地域循環型介護・医療構想 前編

介護業界の課題は大きく分けて4つあります。各課題について、管理者は解決の方向性をそれぞれ提示します。

2. 介護保険財政が厳しい

前編の介護業界の概要と動向で記載した通り、政府は介護保険の給付と負担の見直しを行っています。そのため、要介護1や2の軽度の介護者に対する現状の介護の在り方を考え直す必要はあります。
本課題の解決の方向性は、介護予防サービスを浸透させることが挙げられます。例としては、要支援者に対する介護予防サービスや地域密着型サービス、健康な人に対する生活支援サービスや一般介護予防事業等、高齢者が要介護状態等のなることの予防または要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止を行い、高齢者の健康寿命を延ばす施策等が考えられます。

また、今後厳しくなると予想される介護事業者の取り組みとしては、前述のミライロプロジェクトのように、マンション等の他事業と組み合わせ、全体として利益を創出する仕組みを構築することが挙げられます。

3. 介護難民の発生

介護難民とは、介護が必要であるにもかかわらず、自宅でも病院でも介護施設でも、介護を受けることができない人のことを指します 。前編の介護業界の概要と動向で記載した通り、2025年には団塊の世代が全員高齢者となります。その一方で、介護職員の不足によりサービスや施設の供給が需要に追いついていない地域は存在します。民間会社が2016年にとりまとめた統計では、2020年に政令都市の横浜市と大阪市で介護施設の供給が5万人分不足する見込みであり、地域により介護の格差が生じる予測です。

本課題の解決の方向性は、後述の介護職員の人で不足という課題を解決することや、需要より供給が多い地域に介護難民を異動させ、全体として需要と供給の最適化を図るということが考えられます。

4. 介護職員の人手不足が顕著である

処遇や体力面の影響により、介護職員の人手不足は顕著です。2018年12月に全国ホームヘルパー協議会が公表したアンケート結果によると、「(ヘルパーを)募集しても応募がない」と人材面の課題を回答した訪問介護事業者は約9割(構成比88.0%、複数回答)にのぼりました。そのため、職員の給料を上げられない企業からの離職が相次ぎ、この課題は深刻化する可能性があります。

また、今年4月から外国人の特定技能による在留資格が認められることとなり、介護業界へも外国人材受け入れは見込まれています。しかし、高齢者の外国人に対する言葉や文化の壁、偏見は少なからず存在しています。

本課題の解決の方向性は大きく分けて二つあります。それは、人材の専門分化や機能分化を進めることと、介護ロボットの開発、普及です。一つ目の人材の専門分化や機能分化を進めることは、定年退職前後のシニア層や就業していない女性等が、補助業務に従事できるような制度を作り、介護市場に参入しやすい環境を作るということです。実際に厚労省が今年から「介護職機能分化等推進事業 」による介護助手制度の導入を始めており、モデル事業の指定を受けた12府県市で一定の成果は挙がっています。

二つ目の介護ロボットの開発、普及は、経済産業省と厚生労働省が「ロボット技術の介護利用における重点分野 」を6分野13項目定め開発、導入を支援しているため、今後急速にロボットが一般化する可能性があります。介護ロボットの例は、装着型パワーアシストや歩行アシストカート、自動排せつ処理装置等が挙げられます。介護ロボットにより、介護職員の負担を和らげることや、業務を一部代替することで、人手不足の問題を緩和する効果が期待されています。

介護ロボットの開発企業としては、CYBERDYNE(7779)本田技研工業(7267)等が挙げられます。

5. 高齢者の子が遠くに住んでいるケースが多い

認知症のスペシャリストであるたかせクリニックの理事長高瀬氏によると 、最近増加傾向のケースは、高齢の親が地方で一人暮らし、子が仕事の関係で都会などの遠方に住んでいるという事例と言います。そういったケースでは、一人暮らしの高齢者が自宅で倒れた場合に、気づかれにくいということが起きます。

加えて、そういった高齢者が病院に運ばれた場合に、料金支払い等でトラブルが発生する事例は少なくないのです。「身元保証等高齢者サポートサービス」という高齢者を対象とする身元保証や日常生活の支援、死後事務等を行うサービスも存在する一方で、そのようなサービスのトラブルに関する相談は多く寄せられています。

本課題の解決の方向性は、地域一体で高齢者を見守る仕組みを整えることです。例えば、近所の人々が有償もしくは無償で高齢者のサポートを行う体制を作ることが挙げられます。東京都荒川区では、「高齢者みまもりネットワーク」を整備し、地域包括支援センターや町内会、警察、消防当が名簿を共有し、定期的に高齢者へ声かけ等を実施しています。また、東京都八王子市では、地域のボランティア団体に補助金を出し、「住民全体による訪問型サービス 」として地域の高齢者の生活見守りや生活支援を行っています。
システムを活用した解決の施策としては、人感センサーを搭載した機器 を自治体が設置し、子や自治体が沿革で見守るという方法が挙げられます。

地域循環型介護・医療構想 後編

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ドイツのシュタットベルケに学ぶ地域循環型介護・医療構想 前編

ドイツのシュタットベルケに学ぶ地域循環型介護・医療構想 後編

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このサイトを運営しているhk5です。
1991年生まれ、東京生まれ東京育ち。
都内の某私立大学を経て、某シンクタンクの支社決算業務の主担当として従事。 3年半勤務後、某コンサルテインングファームでAIプロジェクトの企画書作成、某金融機関のチャットシステム実装のPMO、某政府系組織のシステム企画の要件定義等を経験する。
現在、都内の某国立大学院で経営学を学習中。加えて、大学院と提携しているコンサルティングファームと協業し、将来の公立病院の経営戦略をテーマにレポートを執筆中。
また、中小企業診断士として、週1~4程度の頻度でベンチャー企業の業務を手伝い、新事業企画の立案や収支シュミレーションの作成等、パワーポイントを中心とした資料作成や市の融資相談員を行っている。
趣味は星野リゾートと離島巡り。日本中回りたいと思っている。
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