ビジネスモデルキャンバスによる優良病院の分析 大分県立病院編

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1. 本記事の目的

ビジネスモデルキャンバスによる優良病院の分析 概要編

概要編でも述べた通り、ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネスモデルを記述、ビジュアライズし、新規事業や既存事業の評価、変革するためのフレームワークです。

今回の記事では、優良病院のビジネスモデルをビジュアライズすることで、病院における理想のビジネスモデルを規模ごとに導き出すことを目的とします。

優良病院とは、総務省の平成29年度地方公営企業年鑑の個表内の損益計算書 の中で、「経常収支比率および医業収支比率が100%を超えるという二つの条件を満たすもの」と定義します。

診療報酬改定の定義に則り、大病院は400床以上、中規模病院は399床~200床、小規模病院は200床未満と定義しました。本記事では、大規模と小規模の優良病院のビジネスモデルキャンバスを作成します。規模別に作成する理由は、それぞれに置かれている状況が全く異なるからです。

2. 大分県立病院の概要

大分県立病院は、1880年に開設した歴史ある病院であり、大分県の代表的な中核病院として地域医療を担っています。一般病床数は566床を誇り、経常収支比率は105.2%、医業収支比率は102.4%と、優良病院の定義に当てはまります。

3. 大分県立病院のビジネスキャンバス

大病院かつ優良病院である大分県立病院のビジネスモデルキャンバスを、HP および中期事業計画等により作成しました。

まず、ビジネスモデルキャンバスの右側の部分である、お客さんに関わる収入の部分を分析します。本病院は県立病院であるため、主要顧客の一つは大分県の住民という非常に広い範囲を対象としています。そのため、民間も含めた県内の他病院では対応できない高度な医療を必要とする患者を顧客セグメントとして認識する必要があります。また、公立病院として地域の医療機関との病診連携を強化しており、顧客として地域の医療機関も考えることができるのです。

ビジネスモデルキャンバスを確認すると、大分県立病院は顧客セグメントを踏まえた上で病院の価値提案とチャネル、顧客との関係を築いていることが分かります。主に県内の高度・専門治療等が求められる患者に対しては、来院や入院により治療を行っています。しかし、病院業界では深刻な医療従事者の不足や給与費の高騰が課題として挙げられます。

その課題を大分県立病院ではどのように解決したのでしょうか。その一つの解決策は、臨床研修指定病院として積極的に初期臨床研修医を受け入れているということです。病院内で蓄積された過去の豊富な研修の情報に基づいたカリキュラムを初期研修医に対し実施することで、早期に戦力化を図り、人手不足という課題を解決しています。また、初期研修医の給料が高くないことにより、同時に給与費高騰を抑制する効果があります。

顧客セグメントの一つである急病患者には、救急車というチャネルによる診療の他、病院独自に有するドクターヘリにより搬送するという手段を講じています。このことは、県内どこの場所にいる急患に対しても価値が提供でき、病院としてのブランド力向上に寄与しています。また、ブランド力向上という点では、施設情報や医師情報の充実したホームページや、看護師および研修医のブログにより、全てのステークホルダーに対して情報発信を行っています。

地域の医療機関に対しては、周辺地域の医療従事者の各種教育、研修に協力することで、地域の医療全体の底上げを図っています。また、新たに地域医療部を設置することで、地域の各病院の情報を迅速に集めることが、地域の医療全体の底上げに繋っています。以上の要因により、大分県立病院は安定した収益を達成しているのです。

次にキャンバスの左側である活動とコストの部分の分析を行います。まず、研修医を含めたスタッフや規模のメリットを享受できる最新鋭の医療機器、ドクターヘリ等の充実したリソースを有し、高度・専門医療や政策医療を行っています。また、先述したホームページやブログによって情報発信し、研修医や周辺情報機関への提携を円滑に行っています。県立病院のためパートナーは多岐に渡る一方で、高い収益性やブランド力により信頼が厚く、有利な条件での機器調達や病棟建設が進められると考えられ、結果として材料費や医業外費用は抑えられているのです。

以上、大分県立病院は、良好な収益構造とコスト構造を可能とするビジネスモデルを有していることがビジネスモデルキャンバスで確認できます。

ビジネスモデルキャンバスによる優良病院の分析 概要編

ビジネスモデルキャンバスによる優良病院の分析 備前市立吉永病院編

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ビジネスモデルキャンバスによる優良病院の分析 概要編

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このサイトを運営しているhk5です。
1991年生まれ、東京生まれ東京育ち。
都内の某私立大学を経て、某シンクタンクの支社決算業務の主担当として従事。 3年半勤務後、某コンサルテインングファームでAIプロジェクトの企画書作成、某金融機関のチャットシステム実装のPMO、某政府系組織のシステム企画の要件定義等を経験する。
現在、都内の某国立大学院で経営学を学習中。加えて、大学院と提携しているコンサルティングファームと協業し、将来の公立病院の経営戦略をテーマにレポートを執筆中。
また、中小企業診断士として、週1~4程度の頻度でベンチャー企業の業務を手伝い、新事業企画の立案や収支シュミレーションの作成等、パワーポイントを中心とした資料作成や市の融資相談員を行っている。

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